安全運転管理者講習に参加して

先日、一年に一度行われる安全運転管理者の講習に参加しました。

自社で管理する自動車を、5台以上所有している事業所では安全運転管理者を選任し、安全運転管理者は公安委員会が開催する法定講習を1年に1度受けなければなりません。

朝7:00の電車に乗り、講習の予定の1時間前に到着してしまいましたが、すでに参加者の列ができており、まだ会場が開く前だったので、仕方なく蒸し暑い外の列に並ぶことにしました。

会場が開き中に入ると冷房が効いていて、座り心地の悪い椅子でしたがホール内は薄暗く、ついウトウトしながら講習を聞いていました。

昼食を済ませ午後の部に入り、講師の方も参加者の眠気対策をしてくださりながら、ようやく終わりが見えてきた15:00ごろ。

「あれ?去年と同じK講師かも?」と思われる方が登壇されました。私は去年、その方の講話を拝聴して涙が止まらなくなったのです。

今回もまた同じお話をしてくださいました。

40年ほど前のまだK講師が現役で警察に勤められていた頃の一件の交通事故のお話です。痛ましい交通事故の報道を見るたびに、その時のことを思い出すそうです。

被害者は小学1年生の男の子でした。横断歩道が赤だったので、その子は横断歩道の手前でしゃがんで石を触ったりして遊んでいたそうです。(事故の目撃者の話)

やがて横断歩道の信号が青に変わり、男の子は少し時間が経ってから立ち上がり、横断歩道を渡ろうとしたところ、左折してきた大型トラックの後輪に巻き込まれ、頭を2回後輪のタイヤに踏まれほぼ即死という事故。

警察からの連絡でご家族が駆け付けました。お父さんは目を真っ赤にして涙をこらえ、お母さんは支えがないと立てない状態で泣き崩れていました。

重苦しい状況説明の中の救いは、5歳の弟さんが婦人警官等に遊んでもらい館内で無邪気に笑顔でいたことでした。

被害者の男の子は事故による損傷が激しく、K講師を含め警察官等で血液などはきれいにふき取り、変形してしまった頭部もなるべく原型に戻るよう綿を詰めるなどの処置を行い、小さな棺桶に収めました。

母親はとてもご遺体の確認をできる状態ではありませんでした。お父さんだけで男の子の確認をすることになりましたが、お父さんはどうしても弟にもお兄ちゃんと最後のお別れをさせたいと願われたのです。

K講師は考え直すようお父さんに説明しましたがお父さんのお気持ちは変わらず、弟さんも安置室に入ることになりました。

それまで無邪気に笑顔だった弟さんも安置室の異様な空気に神妙になり、お父さんに手を引かれて入って来られました。お父さんは小さな棺桶に収められた男の子の確認を行い、「息子に間違いありません。」とK講師に伝えました。そして弟さんを抱き上げ、「最後にお兄ちゃんにお別れして。」と対面させると弟さんは不思議そうに「お兄ちゃん、なんで寝てるの?」と、お父さんに向かって聞いたそうです。

無邪気な弟さんの問いかけにそこにいた誰もが涙を流し、その様子から急に何かが分かったかのように、弟さんは言葉にならない叫び声を上げて泣きじゃくり、どうしようもなかったそうです。

幸せだった家族の生活を一変させた交通事故。大好きだったお兄ちゃんを奪った交通事故。サッカーや学校が大好きだった男の子の未来を奪った交通事故。

「もう二度とこんな辛い事故は起こって欲しくない。だから私は毎回この事故のことを話すのです」とK講師はおっしゃっていました。

一日がかりで受講したどんな講習よりも、私はこのお話を聞くことで、安全運転の大切さを痛感しました。

ハンドルを持つ私たちは、決してゆとりを忘れてはいけない。急いではいけない。

しっかりと周囲を見渡すことが出来なければ運転してはいけない。

交通ルールを遵守しなくてはいけない。

思いやり、優しさは運転にも現れます。ヘルパーこそ運転の見本と言われるようになりましょう。

 

 

 

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